9月:心に効く温泉
平成26年7月、環境省が「温泉の適応症と禁忌症」を改定しました。そこで適応症に加えられたのが、心にまつわる諸症状です。今回は「温泉と心の関係」について紹介します。
「温泉が心に効く」理由
環境省が改定した温泉の一般適応症(すべての療養泉に共通するもの)に、「自律神経不安定症」と「ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)」が追加されました。これまで経験的に「温泉は心に効く」といわれてきたのですが、今回お墨付きをもらったといえます。では、温泉がなぜ心によいのでしょう。
温泉がストレス解消になる大きな理由は「非日常性」にあります。慌ただしい日常生活を離れ、裸になってゆったり湯につかることがヒトの五感に刺激を与え、自律神経に作用し、心とカラダのバランスを整えてくれるのです。自然に恵まれた温泉地であればなおのこと。こういった効果を転地効果(心理効果)とよびます。
心に効く温泉 場所編
温泉は心を元気にしてくれますが、その中でも特に効果があるのはどんな温泉でしょうか。場所・泉質・条件に分けて紹介していきます。
まず、場所でいえば、だれでも思い浮かべるのは山や海の風光明媚な温泉地でしょう。もちろん、いずれも気持ちのよくなる場所ですが、その作用は大きく異なっています。
カラダの不調と同じように、心の不調にも、さまざまなパターンがあります。自分の状態にあった温泉地へ出かけて、より効果的に温泉パワーを活用しましょう。
心に効く温泉 泉質&温度編
つぎに泉質についてみていきましょう。「温泉の適応症と禁忌症」によると、「自律神経不安定症」「不眠症」「うつ状態」の3項目のいずれにも適応するのは単純温泉です。含有成分の量が一定基準に達していない温泉を単純温泉とよび、成分が少ないゆえに刺激が少なく万人向けの優しい湯といえます。胃腸が疲れたときには薄味の料理がいいように、心が疲れたときには薄めの温泉がよいようです。
湯の温度も大切なポイント。わたしたちの体には、心身のバランスをつかさどる2つの自律神経があり、42℃以上の熱い湯では交感神経が活発になり活動モードに、37~40℃のぬるめの湯では副交感神経が活発になりリラックスモードになります。神経性疾患の治療専門の湯として有名な宮城県の定義温泉(じょうげおんせん)は、ぬるめの単純温泉です(現在は閉鎖中)。心が疲れたときには、心身に負担が少ないぬるめの単純温泉がベスト。ゆっくりつかって心を回復させましょう。