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5月:泉質をマスターしてげんきになろう

平成26年7月に温泉の適応症・禁忌症・効能と、療養泉の基準が改定されました。その内容をピックアップして紹介します。

療養泉をマスターしてげんきアップ

温泉のなかでもとくに療養に役立つものを「療養泉」といいます。湯に含まれる成分の種類と量によって、単純温泉や塩化物泉など10種類に分類されています。

掲示用新泉質名 特徴 主な適応症 主な温泉地
単純温泉 温泉成分の量が一定値に達していない温泉の総称。名前は「単純」でも、各々の湯に含まれる成分によってさまざまな泉質の特徴をもつ。濃度が薄いため肌への刺激が少なく、湯あたりしにくい万人向けの湯。古来より名湯といわれる湯は、単純温泉が多い。 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態 武田尾温泉(兵庫県)、椿温泉(和歌山県)、湯原温泉(岡山県)
塩化物泉 海水に似た成分を含んで塩からい。「熱の湯」とよばれるほど体がよく温まるので、高齢者向きとされる。皮膚の表面が塩によってコーティングされ、湯上がり後も体はポカポカ、保湿効果も高い。塩の殺菌効果から「傷の湯」ともよばれることもある。 切り傷、うつ状態、皮膚乾燥症 赤穂御崎温泉(兵庫県)、城崎温泉(兵庫県)、白浜温泉(和歌山県)
炭酸水素塩泉 重曹泉を多く含む湯は「美人の湯」の代表的なもので、クレンジング効果で角質を軟化させ、皮膚を滑らかにする。湯上がり後は水分蒸発が盛んで肌がカサカサになるため保湿ケアが必要。清涼感があり「冷えの湯」ともよばれる。 末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症 湯村温泉(兵庫県)、汐の湯温泉(大阪府)、龍神温泉(和歌山県)
硫酸塩泉 湯に含まれる成分の違いにより石膏泉、ぼう硝泉、正苦味泉(せいくみせん)に分けられる。いずれも血圧を下げる作用があり高血圧や脳卒中、動脈硬化の予防によいとされる。石膏泉は肌のハリをよくし、ぼう硝泉は肌をしっとりさせる効果がある。 切り傷、うつ状態、皮膚乾燥症 平湯温泉(岐阜県)、玉造温泉(島根県)、岩井温泉(鳥取県)
二酸化炭素泉 炭酸ガスが多く含まれ、小さな気泡が肌につくのが特徴。一般的に泉温は低めだが、皮膚から吸収された二酸化炭素が血管を広げて血の巡りをよくするので、体はあたたまりやすい。免疫力が高まって老廃物が排出されやすくなり、血圧を下げる効果もある。 冷え性、末梢循環障害、自律神経不安定症 吉川温泉(兵庫県)、吉野温泉(奈良県)、花山温泉(和歌山県)
含鉄泉 源泉は無色透明だが、空気に触れ酸化すると茶褐色になる。新鮮な湯のほうが効果は高い。「婦人の湯」ともよばれ、女性に多い貧血や更年期障害、月経障害などによいといわれる。刺激があるので肌がデリケートな人は注意が必要。 一般的適応症に準ずる 有馬温泉(兵庫県)、大沢温泉(兵庫県)、須賀谷温泉(滋賀県)
酸性泉 抗菌力が高く、アトピーやニキビ、水虫など皮膚病の治療によいとされる。肌をひきしめ老廃物を溶かす作用があるが、そのぶん刺激も強く、石鹸で体を洗うことは避けたほうがよい。入浴後は真水でしっかり洗い流す必要がある。 アトピー性皮膚炎、糖尿病 草津温泉(群馬県)、玉川温泉(秋田県)、酸ヶ湯温泉(新潟県)
含よう素泉 平成26年に新しく追加された泉質。よう素(ヨード)は、うがい薬にも使われているように殺菌作用が高く、湯の色は茶色が多い。体の代謝を促進させ、肌や髪を美しくし、動脈硬化の予防や高血圧症にもよいとされる。甲状腺機能亢進症の方は飲用しないこと。 一般的適応症に準ずる 白子温泉(千葉県)、深層湯温泉紫雲の郷(新潟県)、晩成温泉(北海道)
硫黄泉 ゆで卵のような臭いが特徴。古い角質を柔らかくして溶かす、メラニンを分解するなどの働きがあるので美白効果が期待できる。血管拡張作用や解毒作用もあり薬効が高いが、そのぶん刺激が強いので、湯ただれや湯あたりに注意が必要。 アトピー性皮膚炎、表皮化膿症、慢性湿疹 温泉地温泉(奈良県)、南紀勝浦温泉(和歌山県)、租谷温泉(徳島県)
放射能泉 放射性物質「ラドン」を含む。ラドンは体内に吸収されたあと、短時間で排出されるので心配はいらない。免疫力を高め、ホルモンバランスを整えるなど効能の幅が広く、「万病の湯」「痛風の湯」ともよばれる。浴用より吸入がよいとされる。 痛風、関節リウマチ 大山寺温泉(兵庫県)、北白川ラジウム温泉(京都府)、三朝温泉(鳥取県)

温泉地に貼ってある泉質名は「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩泉」のように長いものをよく見かけます。これは、温泉がいくつもの成分によってできているからです。まったく同じ人間がいないように、温泉も同じものはありません。温泉の個性や適応症を知り、そのときの体調や気分にあった温泉を選ぶことが、温泉でげんきになる秘訣です。


温泉に入って心もげんきに

療養泉には、上記泉質別の適応症のほかに、すべてに共通の「一般適応症」があります。

平成26年以前の適応症が、経験則的であったのに対し、改訂版は医学的・科学的見地に立っています。とはいえ昔から信じられてきた効能には、歴史をかさねた重みがあります。新旧どちらも参考にして大らかに入ることが温泉パワーを大いに吸収するコツです。
その他の注目ポイントが2つあります。まず1つめは、自律神経不安定症やストレスによる諸症状など心に関わる症状が追加されたことです。温泉によるリラックス効果が認められました。2つめは、禁忌症の中から、妊娠中が除外されたこと。妊婦さんも安心して入ることができるようになりました。転倒やのぼせに注意して大いに楽しんでください。


監修者プロフィール

天野 勢津子 AMANO SETSUKO

温泉ソムリエ、イラストライター
関西を中心に数多くの温泉を取材する。温泉の魅力を伝えるとともに、多くの人に温泉で元気になってもらうため「温泉の知識」を広げる活動をしている。

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