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生きものと共生する健やかな暮らし動物のおもしろい健康豆知識
睡眠編

生きものと共生する健やかな暮らし 動物のおもしろい健康豆知識 睡眠編

生きものは、心身の疲労回復や機能の修復のために睡眠をとります。私たちヒト(人間)の適正な睡眠時間は6~8時間といわれていますが、キリンやウマをはじめとする大型の草食動物は、1日に2~3時間しか寝ないとされています。そんなに短い時間しか寝ていないのに、なぜ活発に動き回ることができるのでしょうか。動物の知られざる睡眠の秘密について、天王寺動物園の向井猛園長に教えていただきました。
写真提供:天王寺動物園

動物たちの睡眠事情

動物の睡眠時間

睡眠時間は、その動物が生息する環境などによって異なります。
草食動物の場合、野生環境下だと寝ている間に敵に襲われてしまう可能性があります。そのため、人間のように一度に長時間寝るのではなく、短時間の睡眠を断続的にとっているのです。よく「キリンは1日に20分しか寝ない」といわれますが、実際には1日に何度も短い睡眠をとっています。動物園に来られた際には、よく観察してみてください。立ったまま寝ている様子が見られるかもしれません。
また、群れで行動する野生のゾウは、いち早く仲間に危険を知らせるために体の一部をくっつけて寝る姿が確認されています。動物たちは過酷な環境を生き抜くために、睡眠スタイルを工夫しているのですよ。
短い睡眠時間でも平気な動物がいる一方、たっぷり寝る動物もいます。その一例がライオンで、1日に約15時間の睡眠が必要といわれています。明け方や夕方に活動する「薄明薄暮性」の動物であるため、それ以外の時間は寝ていることが多いです。動物園のライオンが寝ていることが多いのはこの性質によるものですので、活動的な姿を見たい場合は朝や夕方にお越しいただくのがおすすめです。
ヒトの場合は、6~8時間の睡眠が必要で、これよりも短くなると、生活習慣病やうつ病などを発症する危険性が高まります。睡眠をしっかりとることは、脳や身体の疲労回復につながりますので、十分な睡眠時間を確保しましょう。

日中は寝ていることが多い3頭のライオンたち(奥から:モナカ、ルナ、ガオウ)。
写真提供:天王寺動物園

動物園の動物たちは、どんな所で寝ているの?

動物園では敵に襲われる心配がない一方、動物たちが周辺の環境からストレスを受けてしまうことがあります。ストレスを軽減するために、動物園ではさまざまな工夫をしています。たとえば、キリンの場合、夜間は寝室に必ず収容し、餌を食べてからゆっくりと睡眠がとれるように木片チップを床材として敷いています。ゾウは床材を砂にすることで、睡眠時間が長くなるといわれています。
寝室は、動物たちがぐっすり眠れるよう環境を整えています。なかでも温度は動物が生きていくうえで非常に重要です。キリンなど熱帯地域に生息する動物は寒さに弱いため、冬場は暖房を使うなど管理を徹底しています。
より良質な環境づくりをめざし、最近ではスローロリスの動物舎で床材を変える検証を行いました。ホワイトチップ(パルプを原料としたチップ)、藁、カシチップ(シラカシを粉砕したもの)、落ち葉の4種類で検証したところ、床材の種類によってにおいを嗅ぎまわったり、マーキングしたりとさまざまな行動をとる様子が確認できました。どの床材が最適かまではわかりませんでしたが、動物たちの行動に変化が現れたことから、床材を変えることは生活環境の向上に寄与する可能性があることがわかりました。
スローロリスの検証を行っている際に、同じく夜行性動物のショウガラゴとフクロモモンガ、ハクビシンの動物舎にもカシチップを入れてみました。すると、フクロモモンガはいつもボールの中で寝ていたのですが、床材を変えた数日後にはチップをベッドにして寝ている様子が見られました。これは非常に稀なことで、チップの床材を気に入ってくれたようです。今後も動物たちの生活が豊かになるよう検証などに取り組んでいきたいと思います。
動物園では、飼育員が環境を整えてあげることが多いのですが、動物自身で好みの睡眠環境に整える場合もあります。チンパンジーのナナコは毛布を羽織って寝ていることがあり、寝心地の良い環境づくりを自発的に行っているようです。チンパンジーは睡眠環境を整える習性をもっていて、野生のチンパンジーは木の上に枝葉を編み込んでベッドをつくります。心地よく眠るという目的でクッション性をもたせたベッドをつくっている可能性があると考えられています。
私たち人間にとっても睡眠環境を整えることは睡眠の質の向上に欠かせません。寝室の温度を適温にしたり、自分に合った寝具を選んだりするなど工夫をしてみるのも良いと思います。

毛布に包まって寝ているチンパンジーのナナコ。
写真提供:天王寺動物園

冬眠する動物たち

普段の睡眠と冬眠の違いをご存知ですか? それは、睡眠中の消費エネルギー量の違いです。
寒さが厳しくなる冬は、野生の動物にとって食料が不足する時期です。過酷な環境を生き抜くために、消費するエネルギーを最小限に留めて巣にこもります。冬眠期間中は体温が下がるうえ、秋に蓄えた皮下脂肪を消費しながら生活するため体重も減少します。冬眠は、動物たちにとって命がけの生態なのですよ。
冬眠する動物は、冬に気温が下がる地域に棲むリスやクマ、ヘビやカエルなどですが、最も気温が下がる北極圏に棲むホッキョクグマは冬眠しない動物です。ホッキョクグマの主食はアザラシであるため、冬でも食べ物に困ることがなく、冬眠する必要がなかったのですが、近年、地球温暖化の影響で北極圏の氷が溶け、餌となるアザラシが獲れず、ホッキョクグマは絶滅の危機に瀕しています。

ごはん・おやつタイムのホウちゃん。ホッキョクグマは主にアザラシを食べますが、植物も食べます!
写真提供:天王寺動物園

Column
天王寺動物園は今年で開園110周年!

天王寺動物園は1915年に開園し、日本で営業している動物園の中で3番目に古い動物園です。2025年1月1日に開園110周年を迎えました。開園当初は約60種 230点ほどだった飼育動物ですが、現在は約170種1000点に増えました。
110周年を迎えるアニバーサリーイヤーである今年は、1年を通してさまざまなイベントを開催します!詳しくは天王寺動物園のホームページをご覧ください。

INFORMATION

プロフィール 向井猛
天王寺動物園 園長。北海道大大学院獣医学研究科修士課程修了後、札幌市の円山動物園で獣医師や飼育職員として勤務。2021年4月に天王寺動物園園長に就任。人にも動物にもやさしい動物園をビジョンに、国際社会に貢献し、世界に誇れる動物園をめざしている。漫画『動物のお医者さん』に「M山動物園の向田獣医」として登場。
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