健康に過ごすHealthcare

健康について考えよう! 健康診断を受診して、
体の状態をチェックしよう!

健康について考えよう! 健康診断を受診して、 体の状態をチェックしよう!

生活習慣病をはじめ、さまざまな病気の予防や早期発見につなげることを目的にしている健康診断。健診は受診するだけで終わりではありません。自分の健康状態を把握するためにも、健診の結果から体の異変を確認することが大切です。また、健診で病気が見つかれば、早期治療を行うことができます。
今月は、保健師の羽地典子さんに診断結果の見方や日々の健康習慣についてうかがいました。

健診結果を読み解こう!
判定や数値の見方を解説

健康診断では生活習慣が原因で発症する病気、いわゆる「生活習慣病」に関するさまざまな検査を行います。健診日の直前だけ食事内容を変えたり、アルコール摂取をやめたりする人もいますが、このような行動は早期発見を遅らせる危険性もあります。いつも通りの生活習慣で健康診断を受けましょう。
健診後の診断結果を見て、「異常なし(正常)」との文言に安心して数値のチェックをしない、「要精密検査・要治療」と書かれているものの医療機関に足を運ばない、という人もいるのではないでしょうか?病気のサインを見逃さないために、診断結果でとくにチェックしてほしいポイントをお伝えします。

健診結果の見方のポイント

  1. 判定
    今回の診断結果をアルファベットで区分しているのが判定区分です。「要精密検査・要治療」の指示がある場合はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。「異常なし(正常)」と記されていても、次の基準値や前回の数値も確認すること。
    【判定区分の例】
    A B C D E
    異常なし
    (正常)
    軽度異常 要再検査
    要生活改善
    要精密検査
    要治療
    治療中
    • ※判定区分の記載方法は健診施設によって異なります。
      健診結果に記されている判定区分をご確認ください。
  2. 基準値
    各検査の基準値は、健康な人の検査値を基に導いています。もし、基準値の範囲内でも上限または下限の境界に近い数値の場合は、生活習慣の見直しをおすすめします。
  3. 前回(過去の数値)
    今回の診断結果とともに前回(過去の診断結果)の数値も記されています。前回と今回の数値を見比べて、大きな変動がある場合は医療機関を受診して詳しい検査を受けましょう。
    • ※健診施設が変わると、前回(過去の診断結果)がわからなくなることもあるので、郵送などで送られきた診断結果表は大切に保管しておきましょう。
  4. 健診結果のコメント欄
    健診を行った医療機関の判定医からのコメントが記されています。「要精密検査・要治療」とコメントが記載されていたら、医療機関できちんと診てもらうこと。早いうちに受診することで、病気の早期発見や重症化を予防できます。生活習慣の改善に役立つ重要な情報も書かれているので必ずチェックしましょう。

生活習慣病予防のために
この3項目は必ずチェック!

生活習慣病予防のためにこの3項目は必ずチェック!

日本人の死因の上位を占める、がんや心臓病、脳卒中は、日々の食事や運動、睡眠、喫煙などの生活習慣が深く関与しています。健診結果で、とくに高血糖・高血圧・脂質異常は必ず確認すること。この3項目は、動脈硬化(血管が硬くなり、内壁にプラークや血栓が沈着して血管が詰まりやすい状態)のリスク要因です。「自覚症状がないから」と放っておくと心筋梗塞や脳梗塞などの危険が一気に上昇します。また、「異常なし(正常)」の判定でも油断は大敵。基準範囲内でもぎりぎりの数値であれば、病気の一歩手前にいると考えておいたほうがいいでしょう。

高血糖

食べ過ぎや運動不足、ストレスが原因といわれる「高血糖」の状態が続くと糖尿病発症リスクが高まります。初期の糖尿病は自覚症状がないので、気づかないうちに重症化してしまう危険も。また、高血糖になると血液中の過剰なブドウ糖が血管を傷つけて、糖尿病の前段階から動脈硬化が進行することもわかっています。

  • 空腹時血糖値:10時間以上食事をとらない状態で採血した血液中の血糖の量。
  • HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー):全身の細胞に酸素を送るヘモグロビンは赤血球内のタンパク質の一種で、血液中のブドウ糖がヘモグロビンとくっつくと糖化ヘモグロビンになります。HbA1cは過去1~2ヶ月前の血糖値を反映した数値。

【健診判定の例】
空腹時血糖が94mg/dL、HbA1cが6.1%の場合、判定は数値の悪い「境界型」となります。

健診では見えない血糖値スパイクに要注意!

「血糖値スパイク」をいう言葉を聞いたことはありますか?これは、食後に血糖値が急上昇した後、ジェットコースターのように急降下する状態をいいます。血糖値の変動が大きいほど、血管に負担を与えます。糖尿病はもちろん、認知症のリスクも高まることが分かっています。通常の健康診断では、朝ごはんを食べずに採血した空腹時血糖を測るため、食後高血糖が見逃されてしまうことがあります。健診結果で正常高値以上の判定がついている方は、ぜひ一度病院で「75g経口ブドウ糖負荷試験」を受けて調べてみてください。

高血圧

収縮期血圧(上)が140mmHg以上、拡張期血圧(下)が90mmHg以上の数値になると、「高血圧」と診断されます。高血圧でも「日常生活に影響を感じないから」と治療しない人や、高血圧に気がついていない人もいますが、放置すると危険。心臓や血管に負担がかかり、動脈硬化が進むと脳卒中や心臓病のリスクが高まります。家庭でもこまめに血圧チェックをしておくといいでしょう。

  • 収縮期血圧(上の血圧):心臓が収縮して血液を全身に送り出すときに血管の壁にかかる圧力の値。
  • 拡張期血圧(下の血圧):血液を全身に送り込んだあとに、心臓が拡張して送り込んだ血液を心臓に戻そうとするときに血管の壁にかかる圧力の値。

【健診判定の例】
収縮期血圧が155mmHg、拡張期血圧が60mmHgの場合、判定は数値の悪い「Ⅰ度高血圧」となります。

家庭でも血圧測定、「隠れ高血圧」を見逃さない!

健康診断で正常値を示しても、家庭では血圧が高い人がいます。このような人は「隠れ高血圧」と呼ばれています。血圧が気になる人は、家庭で毎日同じ時間に血圧を測定することをおすすめします。測定のポイントは、朝起きて排尿後、椅子に座って安静にしてから測ります。また、手首での測定は数値が乱れることがあるので上腕で測ること。毎朝の測定で高血圧が続いたら、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

脂質異常

血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の数値が高い、またはHDL(善玉) コレステロールの値が低い、これらは脂質バランスが崩れている「脂質異常症」が疑われます。すぐに体に不調があらわれませんが、血液中の脂肪が増えすぎると血液がドロドロになり、知らないうちに動脈硬化が進行してしまいます。

  • 中性脂肪:食物中に含まれる脂質や体脂肪の大部分を占める脂肪のこと。トリグリセリドとも呼ばれる。
  • LDLコレステロール:コレステロールを全身に運ぶ働きがあり、増えすぎると血管壁にコレステロールを蓄積させ、動脈硬化を加速させることから「悪玉」とも呼ばれる。
  • HDLコレステロール:血液中に増えすぎたコレステロールや血管壁に蓄積したコレステロールを回収し動脈硬化を防ぐことから「善玉」とも呼ばれる。

【健診判定の例】
中性脂肪が37mm/dL、LDLコレステロールが145mm/dL、HDLコレステロールが68mm/dLの場合、判定はもっとも数値の悪い「受診勧奨レベル」となります。

脳を刺激する危険な食べ物に注意

揚げ物やスナック菓子、糖質と脂質がたっぷりのスイーツには、材料に油、砂糖、塩のすべてが入っているため、「美味しい!」と感じられるように作られています。そのためにお腹がいっぱいになっていても、つい食べ過ぎてしまいます。このような習慣がついてしまっている人は、脂質異常になりやすいので気をつけましょう。

もし、気になることがある場合は、医療機関を受診しましょう!

暮らしに取り入れたい健康習慣

健康診断の結果に一喜一憂するのではなく、これまでの生活を見直すことが大事です。特定保健指導の案内が届いた方は私たち保健師が診断結果を見ながら、どのような食生活や運動習慣を行えばよいのかアドバイスをしますので、ぜひ利用していただきたいです。
保健師としてとくに気になるのは、朝食を抜く、夜遅い時間に食事する人が増えていること。まずは、そこから改善してみませんか。また、デスクワークの人は体を動かすことが少ないので、30分ごとに立ちあがるだけでも効果があります。エスカレーターやエレベーターを利用せず、階段を使うのもいいですよ。
私は野菜をとることを心がけているので、週末に冷蔵庫の残った野菜をぜんぶ煮込んで、野菜スープを作って食べています。ほかにもW炭水化物(麺類とごはん)はさける、昼食のあとは近くの公園まで散歩するなど、健康的な習慣を暮らしに取り入れています。

持続したい健康習慣目標

持続したい健康習慣目標

みなさんも小さな健康習慣を取り入れましょう!

INFORMATION

プロフィール 羽地 典子
保健師。大阪市の保健所で地域保健に携わったのち、青年海外協力隊に参加。帰国後は企業で社員の健康管理と健康教育を担当する。現在は「カウンセリングルーム灯り」主宰。公認心理師の資格を生かし、メンタルトレーニングを取り入れた「股関節・膝が痛い人のための減量法」を個人向けにカウンセリングしている。
https://www.ne.jp/asahi/akari/room/index.html
文字サイズ