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緑のある暮らしで心と体をすこやかに暮らしに自然を取り入れる

緑のある暮らしで心と体をすこやかに暮らしに自然を取り入れる

9月号では、園芸などで植物に触れることはストレスの軽減に役立つなど、心身にさまざまなよい影響を及ぼすことについて紹介しました。今号では暮らしの中での取り入れ方や、近くの公園を歩いて五感で自然を感じる大切さなどを、前号に続き、一般社団法人日本園芸療法学会理事長の浅野房世さんに伺いました。

造花との違い
生きた植物を取り入れる魅力とは

園芸を通じて植物に触れることの魅力は、ゲームやスマートフォン、タブレットにはない、命のあるものに触れる大切さを実感できる点にあります。たとえば朝顔を育てていて、花が枯れてしまっても種は残ります。そうした植物の成長や変化を通して、命の循環を感じられることも、園芸の魅力のひとつです。

生きた植物がもつ癒し効果

家で植物を育てることは心身のリラックスにも役立ちます。仕事中は、活発に動くため、必要な交感神経が優位になりますが、家の中に植物があると、リラックスするときに必要な副交感神経への切り替えがしやすくなると考えられています。

一方で、造花と生きた植物では受ける印象に違いがあります。ホテルのロビーなどで造花を目にしたとき、「これは本物?」と違和感が生じた経験のある人もいるのではないでしょうか。人は無意識の内に植物が本物かどうかを見分けようとすることがあり、触ってみて本物だとわかると安心感を覚えることがあります。反対に造花だとわかったときには、どこか物足りなさを感じることもあります。これは、人が本能的に命あるものを求めていることや、視覚だけでなく、触覚や嗅覚など、五感で感じる違いに関係していると考えられます。造花ではなく切り花を飾ることは、やがて枯れていく姿を目の当たりにして、命あるものの自然な変化を受け入れる機会にもなります。

初心者におすすめの植物は?

まずは育てる環境をチェック

ベランダで植物を育てたいと思ったら、まずは育てる環境を確認することからはじめましょう。


チェックするポイント
  • ベランダの向き
  • 日照時間
  • 夏の暑さ
  • エアコンの室外機がそばにあるか など


こうした環境に問題がなければ、プランターでトマトなどの野菜を育てるのがおすすめです。成長の変化を楽しめるだけでなく、収穫する喜びも味わえます。

ただし、近年の暑さは厳しく、プランターを置くコンクリートからの熱気も植物には大きな負担になります。また、以下のようなケースでは、育てるのが難しいこともあります。

  • 昼間に世話ができない
  • 西向きのベランダで強い日が当たる
  • エアコンの室外機の風が直撃する場所 など

こうした場合は、季節を問わず育てられる観葉植物を室内に置くのもよいでしょう。
たとえば、丈夫で育てやすいスパティフィラムなどがおすすめです。

観葉植物のみずみずしいグリーンを眺めることで副交感神経が優位になり、リラックス効果を高めるきっかけになります。

大切なことは、自然を五感で感じること

身近な自然を楽しむ工夫

植物を育てることは、「命あるものを育てる」という意味でとても大切なことです。しかし、無理に園芸をはじめなくても、身近な自然に触れるだけで効果が期待できます。たとえば、近くの公園を散歩したり、きれいな色の葉っぱを本の間に挟んでおき、仕事の合間に眺めてみたりすることも、自然を生活に取り入れる方法です。公園を散歩するときは、吹き渡る風の中に秋の気配を感じたり、花の香りを嗅いでみたり、鳥の声に耳を澄ませたりと、五感を使って自然を味わうことが大切です。落ち葉を集めたり、冬の寒い時期は硬かった枝先に花芽がついてだんだん膨らんでいく様子を観察したりすることも、自然の楽しみ方のひとつです。

自然とのつながりが心の力になる

こうした変化に気づくためには、日常のなかで自然を眺める“ゆとり”をもつことが大切です。私たち人間も、自然の一部です。自然とのつながりを感じることで心が癒され、レジリエンス(回復力)が高まると考えられます。

五感で楽しむ「ふれあいの庭」

昭和47(1972)年に開設された大泉緑地。水田だった土地を造成してつくり上げた一大森林公園で、約100haの敷地に約200種・32万本の樹林が植えられています。自然との触れ合いが楽しめる「自然ゾーン」内にあるのが、浅野さんが設計に携った洋風庭園の「ふれあいの庭」です。(写真提供:大泉緑地)

ハーブや野菜などを植えた「キッチンの庭」、香りのよい植物でいっぱいの「香りの庭」、耳を澄ませて水琴窟や風の音を楽しみたい「音の庭」、鮮やかな花が咲き競う「色の庭」の、4つのテーマから成り、ユニバーサルデザインをテーマに五感を通じて自然に親しむことができます。

住所:大阪府堺市北区金岡町128

最寄り駅:大阪メトロ御堂筋線新金岡駅など。

園芸療法の力をもっと知りたい方へ

浅野房世・元 子怡・三宅麻未 著(2026)
『園芸でケアする~高齢者のしあわせ探し~』風景パブリッシング.
認知症の高齢者を対象として、園芸が心身にどのような変化をもたらすのか、その効果と活用方法を解説した実践的な1冊。エリクソンやマズローなどの発達心理学を参照しながら、幸福の視覚的評価スケール、客観的な質的評価などを用いて、2.5年間(3ケース)にわたる園芸療法の効果を検証しています。さらに、園芸によるケアを実際に行うための具体的な方法や、園芸療法士の資格取得についても紹介。園芸が利用者だけでなく、介護者にも心のゆとりをもたらすことについても触れており、園芸療法を学び、実際のケアや支援の場で活用したい人にとってもおすすめの内容となっています。

INFORMATION

監修 浅野房世
一般社団法人日本園芸療法学会理事長。上智大学経済学部卒業。九州大学でタナトロジー(死生学)と風景の関係を研究し、「癒しの風景」に関して博士号取得。東京農業大学農学部バイオセラピー学科教授を経て現職。技術士(都市及び地方計画)、一級造園施工管理技士、一般社団法人日本園芸療法学会認定上級園芸療法士。植物が人を癒す力に注目し、誰もが癒される緑空間を「緑のユニバーサルデザイン」として世界で初めて提唱した。
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