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東洋大姫路高校野球部 岡田龍生監督インタビュー<前編>「教えすぎない指導法」とは

東洋大姫路高校野球部 岡田龍生監督インタビュー<前編>「教えすぎない指導法」とは

履正社高校を全国制覇に導いた名将・岡田龍生監督。2022年に母校の東洋大姫路高校の監督に就任し、わずか3年で春・夏の甲子園出場を果たしました。選手の自主性を尊重し、自ら考えてプレーする大切さに気づかせる「教えすぎない指導法」は、思春期のこどもとのかかわり方や会社で信頼関係を築く際に役立つヒントがありました。

指導法転換のきっかけ

私が履正社の監督に就任したのは1987年のこと。今でこそ、阪神タイガースの坂本誠志郎選手や東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手など、プロ野球選手として活躍するOBは増えましたが、当時はあまり結果が出ておらず、甲子園出場は夢のまた夢でした。それでも選手たちを甲子園に連れて行ってやりたいと思い、私自身の高校時代がそうだったようにスパルタで厳しい練習を課しました。その結果、努力が実を結び、10年目の1997年に夏の大会で甲子園初出場を果たすことができました。

その後、2度目の甲子園をめざし奮闘していた2002年、体罰により半年間の謹慎処分を受けます。なぜ指導方法を理解してもらえなかったのだろうと悩み辛い期間でしたが、復帰後はどうやって指導するか、新たな取り組みをしなくてはと考えていたとき、日本体育大学野球部に在籍していたころに練習試合で交流したアメリカの大学の選手たちの姿を思い出しました。彼らは監督と対等に会話し、どうすればもっと野球がうまくなるのか自ら考え練習に取り組んでいました。あの選手たちのように「やらされる野球ではなく、選手自身が考える野球をしよう」という考えに行き着きます。あくまでもプレーをするのは選手であり、監督は考えを一方的に押しつけるのではなく、能力を発揮してもらうために環境を整えるのが仕事。主に「自主性」「組織づくり」「数値化」を軸に指導方針を方向転換したことで、野球部もいい方向に変わっていきました。

自主性を育む「教えすぎない」指導

選手の自主性を育むために、意識しているのは「あまり言いすぎない」「説明しすぎない」こと。1から10まで教えることが彼らの自主性を奪うからです。説明は5に留め、あとは選手たちに考えさせることで、練習中に選手同士で気づいたことを積極的に話し合う姿勢が生まれます。もちろん選手たちが「自分で考えて行動できる」ようになるには時間を要しますが、忍耐強く接することも大切。彼らが責任感を持って練習に励むことで、自分たちで考えた質の高いプレーが生まれ、おのずと強いチームになっていきます。

この指導方法は放任的だと誤解されるかもしれませんが、何も好き放題させているわけではありません。練習メニューなどは管理しており、その中で自主性を育む工夫をしています。たとえば、毎日貼り出す練習のタイムスケジュールには、最初からウエイトトレーニングをする人、室内でバッティングから始める人、グラウンドでノックから始める人と、個々の名前が書いてあります。3時間という限られた練習時間の中で、自分がどんな流れで動けばいいかを頭に入れて練習ができるので、指導者が「次、誰々どこ行け」という指示をする手間を省くことにもなります。 今の子は「これをしなさい」「あれをしなさい」という指示を待つのに慣れてしまっているので、自分で考えて取り組むことを習慣にすることが大事です。

私が高校球児だった当時は完全な上意下達の時代で、言われたことを淡々とこなすだけでした。野球だけでなく社会全体でそのような風潮がありましたが、今は世代に関係なく、コミュニケーション能力が求められたり、どんどん意見を出すことを求められたりする時代ですよね。選手の自主性を育むことは、選手にとって将来的にも役に立つと思っています。

強いチームを作るための組織づくり

私が組織づくりで意識していることは、保護者・選手とのコミュニケーションと指導者間での情報の共有です。

謹慎処分を受けたことは、選手の保護者からの投書が発端でした。指導について理解してもらうためには、保護者と信頼関係を築くことが必要だと考えました。うちの子は頑張っているのにレギュラーになれないと不満のある方には、試合以外の普段の様子などを伝え、改善点をお話しすることもあります。履正社時代から始めたこの取り組みは、保護者の方とかかわる貴重な機会として現在も続けています。選手との面談では、野球以外の話もよくしています。たとえば選手の担任に「あの子は休み時間にいつも黒板をきれいにしてくれている」と聞いたら、「担任が褒めていたぞ」と些細なことでも伝えています。そうしたことが、自分を見てくれているという自信につながると思っています。保護者や選手一人ひとりと密に話をすることで、より強い信頼関係が築けていると感じます。

強いチームを作るためには、指導者側が一枚岩になって取り組むことが不可欠。東洋大姫路高校野球部では、会社でもおなじみの「ほう・れん・そう=報告、連絡、相談」を徹底し、外部コーチやトレーナーも含めた約20名でグループLINEを活用しています。たとえば元気のない子がいたとして、悩んでいる原因は野球のことなのか、人間関係や家庭のことなのかを把握することは難しいですよね。だけど指導者の一人が「実は家でいろいろあって」と聞いたことを共有しておくと、声掛けや指導法などのアプローチが異なってきます。情報が集まりやすい風通しのいい組織にすることで、選手たちのために団結できるんです。

数値化することで課題が見えてくる

筋肉量や体脂肪量などを測定する装置を導入しており、毎月1回測定します。その数値はすぐにフィードバックされるので、体の変化が一目瞭然です。今は会社でも漠然と「みんなで頑張りましょう」ではダメで、今月、来月、今年度と具体的な目標を掲げていろんな対策を練りますよね。同様に、毎月の数値を比較できるので、体づくりにおいて何が足りていないのか選手自身もわかりやすい。測定値は各自がアプリでも確認できるのでトレーニングのモチベーションになっているようです。

野球選手において体づくりは基礎中の基礎であり、非常に重要な要素です。監督就任時、東洋大姫路の選手たちが履正社と比べて平均体重が10kgも少なく、スイングスピードも15〜20km/hほど違いました。全国で勝てるチームにするためには打撃力と体力の強化が肝心ですが、この状態だと結果を残すのは難しい。体づくりや野球の技術向上のため、監督を引き受ける際に体成分測定装置の導入の他、室内練習場やトレーニング器具をそろえてもらうようお願いしました。おかげで全国でもトップクラスの室内練習場ができ、同時に最大12カ所で打撃練習に取り組めるようになりました。併設のトレーニング室は器具を充実させ、トレーナーも複数人が指導しています。

また、体づくりのためには食事面のサポートが欠かせません。体力や筋力の促進だけでなく、ケガをしにくい体にするためにも重要です。朝夕の食事は学校の食堂でとりますが、同校の管理栄養士に依頼し、野球選手に必要なバランスのいい食事がとれるようになったのは、大変心強い限りです。また、履正社時代に引き続き、選手とその保護者に対して、食事や栄養に関する講習も行っています。

INFORMATION

監修 岡田龍生
東洋大姫路高校で3年生のときに主将としてセンバツに出場し4強入り。日本体育大学卒業後は社会人野球で1年間プレーする。その後、35年間監督を務めた履正社では2019年夏に全国制覇するなど春夏通算13度の甲子園出場を果たす。名将としての手腕を買われ、母校を再建するべく2022年から監督を務め、2025年夏の大会ではベスト8に輝く。2026年からU-18日本代表の監督に就任。
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