社会全体で介護を支えることを目的に2000年に設立された「介護保険制度」。介護サービスは、要介護や要支援の認定を受けた人が自立した生活を送るために介護保険を利用して受けられます。介護は一人でするものではありません。頑張りすぎて疲れ果ててしまわないよう、サービス利用開始までの流れや、メンタルを保つためのヒントなどを、介護福祉士の池本美和さんにうかがいました。
介護サービスを利用したいと思ったら?
まずはお住まいの各市区町村の窓口(地域包括支援センターや役所)に相談して申請します。地域包括支援センターは中学校区におよそ1カ所設置されているため、地域に特化した情報を熟知し、各施設とのつながりも強いといった特徴があります。
介護サービスを受けるには、[要介護1〜5]、あるいは[要支援1・2]の7段階のうちどの段階にあてはまるかを、訪問調査やかかりつけ医の意見書をもとに判定してもらうことが必要で、申請から認定が出るまでに約1カ月かかります。[要介護1〜5]と認定されたら、在宅の場合は居宅介護支援事業者(ケアマネジャーの所属する事業所)が、施設の場合は施設の介護支援専門員がケアプラン(介護サービス計画)を作成します。[要支援1・2]の場合は地域包括支援センターが介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画)を作成します。
訪問調査の際は家族が立ち合い、介護サービス事業者と契約を結ぶ際は、ケアマネジャーも一緒に自宅に来てもらって行う必要があるなど、家族に求められる役割は少なくありません。
介護保険で利用できるサービスの種類
介護保険では、7段階に分かれる要介護度に応じて受けられるサービスが決まっています。どんな介護サービスを受けるか、どのような事業所が適しているかなどについてケアプランが作成され、それに基づいてサービスの利用が始まります。
- 利用できるサービス
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- 介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
- 自宅で受けられる家事援助などのサービス(ホームヘルプ、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリなど)
- 施設などに出かけて日帰りで行うサービス(デイサービス、デイケアなど)
- 施設などで生活(宿泊)しながら、長期間または短期間受けられるサービス
- 訪問、通い、宿泊を組み合わせて受けられるサービス(小規模多機能型居宅介護)
- 福祉用具レンタルのサービス(ベッド、手すり、車椅子、歩行器など)
- ※出典:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」
ケアマネジャーは頼れる伴走者
担当のケアマネジャーは、可能な限り自立した日常生活を送るためのケアプランを作成するだけでなく、事業者や関係機関との連絡・調整役を担い、時には家族の困りごとに耳を傾けてくれる、いわば伴走者のような存在。もし、介護サービスを受ける親自身はもちろん、家族がケアマネジャーとの相性がよくないと感じたら担当を変えてもらうことも可能です。ケアプランは介護度が進むにつれて、その都度変更が必要となります。ケアマネジャーに任せっきりにするのではなく、親にとってどんな介護サービスが必要かを相談し、わからないことは聞いたり自分で調べたりしながら、納得して進められるといいですね。
Column
親が嫌がる場合はどうすればいい?
親に家に閉じこもらず、介護サービスを利用して活発に過ごしてほしいと願っても、「そんなものは必要ない」「他人を家に入れたくない」と拒否される場合があります。人それぞれなので伝え方は難しいのですが、「お父さん(お母さん)が弱ってきたから利用してほしい」と言うよりも、「“私が”心配だから」などと、「I(アイ)メッセージ」のほうが伝わりやすいと思います。また「趣味のグランドゴルフを続けられるように足腰を鍛えるリハビリができるよ」などと、具体的な目的を掲げるのもいいでしょう。最初は嫌がっていても、週1回の訪問リハビリなどを継続するうちに、少しずつ慣れてくる場合もあります。時間はかかるかもしれませんが、諦めずに気長に行きましょう。
プロにお願いできることは任せて
息抜きする時間を持とう
働きながら自宅で介護をするのは、介護サービスをフル活用してもなかなかの至難の技。自分以外の家族や職場など周りの人の理解や協力がないと成り立ちませんし、一人で抱え込むのは危険です。要介護度が上がるにつれて、できないことが増えて目が離せなくなるので、そうなる前に自分が息抜きできる「何か」を見つけておきましょう。例えば好きな映画を観たり音楽を聴いたり、推し活に没頭したり、香りのいいお茶を楽しむ時間を持つ、あるいは散歩するだけでも気分転換になります。親が心配で大事にしたいという思いから一生懸命になりすぎて自分のことは後回しになりがちですが、そうなると疲れ果てて “優しい介護”ができません。また、日々の食事や排便の悩みは尽きませんが、こぼしたり汚したりしても「上手くいかないときもあるよね」ぐらいのおおらかな気持ちでいることが、結果的に自分自身を助けます。運動やレクリエーションはデイサービスに任せて、排便コントロールが難しければ訪問看護にお願いするなど、関わってくれる人を増やして自分の役割を減らすことが、少しでもメンタルを崩さずに介護を続けられるヒントかもしれません。