経営と現場から求められる
対話力と品格
私の主な職務は、ジュビロ磐田のチーム強化と地元の方々に愛されるクラブづくりです。ほかにも広報活動など多岐にわたっていますが、やはりメインとなるのはチームの強化になります。 監督は選手のコンディションを管理しながら彼らの技術や戦術を磨き、試合では采配を振るいチームを勝利へと導く。一方、スポーツダイレクターはチーム強化とクラブ経営を両立させることが仕事です。クラブが掲げるビジョンのもと、中長期的なチーム強化を視野に入れた選手の獲得や環境整備、その際にどれだけの資金が必要かということを考えて経営側と交渉します。企業でたとえると、監督は職人であり、私は現場と経営側との間を調整する、いわば総務部長的な役割でしょうか。
どんな組織でも結果を出すことが求められるでしょう。私は経営陣から言われるがままに進めるのはよくないと思うので、まずは理解を得ることから始めます。とくに交渉は人間同士のやり取りですから、機械的に処理していくわけにはいきません。うまく進めるためには、「求められているところをやる」「納得のいく形へと導く」こと。まずは考えを整理し、構想や戦略を自分の中でクリアにします。そして交渉では「私はこういう方向にチームを持っていきたい、その代わり必ずやってみせます」と、自分の考えとそれに伴う覚悟をストレートに伝えています。すべてが完璧にできているわけではありませんが、経営陣からの理解や信頼を得やすいです。
なかには私の考えに反対する人や、二言目には問題点ばかりを指摘する人もいますが、「困ったな」と思う程度です。マイナスの感情が出てくると、冷静な判断が難しくなりますから、敵や味方といった観点で相手を見ませんし、敵をつくっても仕方ないでしょう。選手時代もそうでしたが、力づくで推し進めるタイプではないので、仕事では器用さと品位は心がけています。
現場については、私は人の良いところを見るのが好きなので、監督をはじめ、選手やスタッフそれぞれの優れた能力を生かせる組織づくりをしています。監督とコーチ陣は、常に選手の一挙手一投足を見て心の内を繊細に汲み取り、ベストコンディションを維持できるように支えてくれている。クラブ運営を担当するスタッフたちは、全力でチームのために、日々の練習や試合、サポーターや地域の方々との調整など、各々が得意分野を活かしながら職務に取り組んでくれています。現場の細かなところはスタッフに任せていますが、私を頼りにしてくれているので、彼らとコミュニケーションをとりながら働きやすい環境づくりをしていきたいですね。私はみんなの想いを背負って頑張るのが好きだし、どんな状況に置かれても「仕事は楽しくやる」と決めています。
そして、スポーツダイレクターは約束したことが守れなかったらそこで終わりということも承知の上ですので、プレッシャーはありません。どの仕事も覚悟を持ってやるだけです。





