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スポーツダイレクターから学ぶ<前編>組織マネジメントに必要な
変革マインド

スポーツダイレクターから学ぶ<前編> 組織マネジメントに必要な変革マインド

サッカーJリーグ開幕から30年、多くの日本人選手がヨーロッパに渡りました。そこで得たものは高い技術だけではなく、組織マネジメントについても同様です。なかでも名門クラブの功績にはスポーツダイレクターのリーダーシップが大きく影響しています。
ジュビロ磐田の黄金期を支え、引退後は指導者やマネジメントのメンバーとして、欧州のクラブで活動してきたスポーツダイレクターの藤田俊哉さんに、組織マネジメントに必要なマインドセットについて伺いました。

経営と現場から求められる
対話力と品格

私の主な職務は、ジュビロ磐田のチーム強化と地元の方々に愛されるクラブづくりです。ほかにも広報活動など多岐にわたっていますが、やはりメインとなるのはチームの強化になります。 監督は選手のコンディションを管理しながら彼らの技術や戦術を磨き、試合では采配を振るいチームを勝利へと導く。一方、スポーツダイレクターはチーム強化とクラブ経営を両立させることが仕事です。クラブが掲げるビジョンのもと、中長期的なチーム強化を視野に入れた選手の獲得や環境整備、その際にどれだけの資金が必要かということを考えて経営側と交渉します。企業でたとえると、監督は職人であり、私は現場と経営側との間を調整する、いわば総務部長的な役割でしょうか。
どんな組織でも結果を出すことが求められるでしょう。私は経営陣から言われるがままに進めるのはよくないと思うので、まずは理解を得ることから始めます。とくに交渉は人間同士のやり取りですから、機械的に処理していくわけにはいきません。うまく進めるためには、「求められているところをやる」「納得のいく形へと導く」こと。まずは考えを整理し、構想や戦略を自分の中でクリアにします。そして交渉では「私はこういう方向にチームを持っていきたい、その代わり必ずやってみせます」と、自分の考えとそれに伴う覚悟をストレートに伝えています。すべてが完璧にできているわけではありませんが、経営陣からの理解や信頼を得やすいです。
なかには私の考えに反対する人や、二言目には問題点ばかりを指摘する人もいますが、「困ったな」と思う程度です。マイナスの感情が出てくると、冷静な判断が難しくなりますから、敵や味方といった観点で相手を見ませんし、敵をつくっても仕方ないでしょう。選手時代もそうでしたが、力づくで推し進めるタイプではないので、仕事では器用さと品位は心がけています。
現場については、私は人の良いところを見るのが好きなので、監督をはじめ、選手やスタッフそれぞれの優れた能力を生かせる組織づくりをしています。監督とコーチ陣は、常に選手の一挙手一投足を見て心の内を繊細に汲み取り、ベストコンディションを維持できるように支えてくれている。クラブ運営を担当するスタッフたちは、全力でチームのために、日々の練習や試合、サポーターや地域の方々との調整など、各々が得意分野を活かしながら職務に取り組んでくれています。現場の細かなところはスタッフに任せていますが、私を頼りにしてくれているので、彼らとコミュニケーションをとりながら働きやすい環境づくりをしていきたいですね。私はみんなの想いを背負って頑張るのが好きだし、どんな状況に置かれても「仕事は楽しくやる」と決めています。
そして、スポーツダイレクターは約束したことが守れなかったらそこで終わりということも承知の上ですので、プレッシャーはありません。どの仕事も覚悟を持ってやるだけです。

 

いまのベストをさらに輝かせる

2022年にジュビロ磐田からスポーツダイレクターのお話をいただきました。チームを離れて17年という長い年月が経っていましたから、自分にはまったく想定外のオファーでした。気持ちを動かしたのは、私自身を育ててくれたクラブチームへの愛でした。
最初のオファーから決意するまで、「今はそのタイミングなのか」「自分にできることは何なのだろうか」と繰り返し自分自身に問いかけました。でも、「求められているところに身を置く」というのが私の信念。その間、クラブの熱意にふれ、「これはよほどの状況に違いない。私にそこまでの期待をしてくれているんだ」と思った瞬間にようやく決心がつきました。
就任したのはシーズン途中。残り6試合でJ1残留をかけた状況でした。結果、J1に残留することはできませんでしたが、 就任する際にたくさんの方からジュビロ磐田への想いを聞き、みなさんの満たされていない部分を一つひとつ埋めていきたいと思いました。また、私が現役だったころのジュビロ磐田の黄金時代を振り返って、「あのころのようにチームを戻したい」という声も多くありました。いまでも大切に思ってくれる気持ちはとても嬉しいのですが、古き良き時代の功績は、当時のメンバーが集まって思い出話をするくらいで十分。仮に戻したとしても、満足する人はいないでしょう。過去に意識を向けると未来が形成されません。いまの選手たちがピッチで輝けるジュビロ磐田史上最高のチームづくりが私の使命なのです。

※9月号に続く・・・

INFORMATION

プロフィール 藤田 俊哉
ジュビロ磐田スポーツダイレクター。1971年10月4日静岡県生まれ。筑波大学卒業後、1994年ジュビロ磐田でプロデビュー。2003年にはオランダリーグ・ユトレヒトへ移籍。名古屋グランパス、ロアッソ熊本を経て、2011年ジェフ千葉で現役引退。その後、オランダのVVVフェンロでコーチ、英プレミアリーグ・リーズ・ユナイテッドAFCの強化部、日本サッカー協会欧州駐在強化部員を務め、2022年、ジュビロ磐田スポーツダイレクターに就任。
https://www.jubilo-iwata.co.jp/
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