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家族のコミュニケーション術 <前編>どうする?
高齢の親とのコミュニケーション

家族のコミュニケーション術<前編>どうする?高齢の親とのコミュニケーション

たとえ親子でも、年齢を重ねると互いの生活リズムや価値観の違いからコミュニケーションがうまくとれないなど、悩ましく思ってしまうことはありませんか?人間関係のさまざまな個別相談や講座を行う「フェリアン」に所属する臨床心理士の北原絵梨さんに、高齢親との向き合い方を聞きました。

お互いに思いやりすぎて
気持ちがすれ違うことも

親との関係ではお互いを大切に思いながらも、それぞれの事情や思いが先行し、つい踏み込みすぎてしまうことはありませんか。

たとえば、親が身近な存在の子どもや孫の行動が気になるあまり、休日の予定や子ども(孫)の将来について干渉しすぎることがあります。また、家電などの進化で生活が便利になったことや、男女間での仕事と家庭における役割分担や意識の世代ギャップがあることを実感できず、「今の人はラクしてるわね」「男性に家事をさせるなんて」などと親から言われて、コミュニケーションがうまく図れないこともあるでしょう。
一方、子ども世代が年老いた親にきつい言葉をかけている場合もあります。たとえば、親の考えを聞かないまま、「家を片付けて」「お墓はどうするつもり?」と一方的に言うことで、親からすれば、「まだ元気なのに」「いずれ相談しようと思っていたのに」と、腹立たしい気持ちになっているかもしれません。
親子の意思疎通がうまくできなくなると、お互い不満を抱えてしまい、幸福な状態とは言えません。子ども世代は、若い頃の親とは違うことを理解したうえで親との関係を見直し、互いのライフスタイルに合った距離感を心がけることも大切です。

親子関係1

なぜ、親子のコミュニケーションに悩みが生まれるの?

体力・知力・気力の低下
段差のないところで転んでけがをしたり、記憶があやふやになったりするなど、親が年老いていく姿を見るのはショックなこと。とくに実の親の場合、元気だった頃とのギャップを寂しいと感じる人もいるでしょう。心配のあまり感情的になりすぎて、親に「もう歳なんだから、やめた方がいい」といった言葉をかけていませんか。親自身が実感している心身の衰えや不調を子どもに指摘されることは快いものではありません。親が年齢とともに機能低下することはあたりまえと受けとめまましょう。また、親との関係をめぐって兄弟姉妹とのもめごとが増えるケースもあります。頼りにしていた親の変化に戸惑うことや、腹立たしく思うのは子どもなら誰もが持つ感情だと、俯瞰で周囲を見渡すことを心がけましょう。
パートナー(夫・妻)との死別

人生をともにしたパートナーを失って、喪失感を感じるようになり、本音を話せなくなるなど心を閉ざしてしまうことがあります。親が抱いているつらい気持ちに寄り添うような会話や態度を心がけましょう。

退職などによる社会的役割の喪失

定年退職などで社会的な役割を失うと、生きがいを見出だせなくなります。さらに、生活リズムの変化で心身に不調をきすこともあるでしょう。親がどのように過ごしたいか、会話の中で少しずつ聞いてみたり一緒に考えたりしてみましょう。親自身が変化を受け入れ、新たな生活を楽しむ工夫ができるようになることが健康につながりますので、子ども世代がサポートしてあげてください。

世代間の価値観の違い

親から独立すると、自分の仕事や新たに築いた家族のことを中心に考えるようになるでしょう。親子で意見が合わないときは、「そう考えているんだね」と親の気持ちを受け止めることにとどめましょう。また、親からライフスタイルを非難されたり、休日は親を優先するように促されたりすると不快になることもあるでしょう。そう感じてしまうのは当然です。ほどよい距離感をとりながら、親を大事に思っていることと、理由をきちんと説明したうえで、「できないこともあるよ」と伝えるように努めましょう。

幸せな親子関係を
キープするために

親世代の中には「歳をとってもいいことなんかない」とネガティブにとらえる人もいらっしゃいます。落ち込みを感じやすくなることもある年代ですが、豊かな人生経験からくる知恵もお持ちです。 子どもが親に「ありがとう」「助かるわ」と伝えることで、親は大切に思われていると安心し、より元気でいられることもあります。 親の価値観を押し付けられることがある場合は、一旦親の話を聞いたうえで「そうなんだ。私はこう思うよ」と自分の気持ちを述べてみてもいいでしょう。 「どうしてできないの」などの老いを否定する言葉やため息、無視も親の心を傷つける場合があります。子ども自身、発したきつい言葉やひどい態度を取ったことに罪悪感を持つこともあります。互いに気持ちよく安心できる言葉がけを意識できるとより良いでしょう。

親子関係2

ひとりで悩まず、専門機関に相談を

親子間のコミュニケーションがとれず距離を置いたままでいると、気づかないうちに親の認知症など心身の病が進んでいる場合があります。また、親の変化に子どもが悩んでしまい、眠れなかったり、パニックになったりすることもあります。家族だけでは変化に気づきにくい場合や、客観的にとらえることが難しい場合もあるので、早めに医療機関や福祉機関に相談してみましょう。

親についての相談窓口

おもに、親子間のトラブルや親の行動での困りごと、親の心身に異変を感じたときなど。親自身が悩みや不安を抱えていときは、親が信頼する人や支援機関への相談を促してあげましょう。

お住まいの地域の地域包括支援センター
親のかかりつけ医やソーシャルワーカー
近所の知人・友人や親せきなど、親が普段から頼りにしている人や支援機関

子どもであるご本人の相談窓口

おもに、親子間のトラブルにより自身の体調や心身に異変を感じたときなど、ひとりで悩まず信頼できる人や専門家を頼りましょう。

パートナーや兄弟姉妹、友達など信頼できる人
男女共同参画室に設けられた相談所
かかりつけ医(症状が明確な場合は、睡眠外来や精神科などの専門医や専門外来)
大学や民間のカウンセリング施設(臨床心理士や公認心理師が対応する施設)

Column
親子のトラブルで悩んだら、
自分ひとりで抱え込まないで!

これまでたくさんの家族を見てきましたが、ひとつとして同じ家族はありません。最適な親子のあり方はそれぞれに異なり、必ずしも理想の形があるわけでもありません。「家族はこうあるべき」と無理をせず、お互いにゆとりをもっていられることも大切でしょう。
子どもだから親の世話をしなければいけない、頼られたら応えなくてはいけないと、「〜すべき」にとらわれすぎると、心身に不調を生じたり、できない自分を肯定できなくなったりしてしまいます。まずは、子どもである自分が親にできること、できないことを整理することも大切です。その中でできないことがあってもあたりまえ。さまざまな思いや心配から悩むことは自然なことですので、一人や家族だけで問題を抱え込まず、信頼のおける人や相談機関を頼りましょう。

INFORMATION

監修 北原 絵梨
フェリアン所属。臨床心理士、公認心理師として精神科診療内科クリニックや学校、家庭相談機関、男女共同参画センターなどで児童から高齢世代までさまざまな方へのカウンセリングや相談支援を経験。相談者の悩みや生きづらさに寄り添いながら、生じているつらさの背景を整理し、その人らしく歩めるように支援を心がけている。
https://felien.co.jp/
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